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1.鉱物資源と鉱業権

(1)鉱物資源と鉱業法

鉱物資源の役割

 資源に乏しい我が国にとって、産業や国民生活に不可欠な基礎素材であるレアメタルや石炭、天然ガス、石灰石などの鉱物資源を安定的に供給することは、国民経済上、極めて重要な課題です。

 九州においては、筑豊、三池、唐津、北松、崎戸松島、高島、天草等の炭鉱が20世紀の我が国経済を支えたことはご承知のとおりです。

 今日においても、金鉱、石灰石、けい石や可燃性天然ガスなどの鉱物について九州各地の鉱山が、有用な鉱物資源の供給を通して社会貢献を続けています。とりわけ鹿児島県下での金銀鉱石、そして福岡、大分県下での石灰石は、国内の重要な供給拠点の役割を担っています。

鉱業法

 鉱業法は、こうした有用な鉱物資源を地域社会との調和を図りつつ合理的に開発するために、昭和25年に制定されました。

 鉱業法では、土地所有権から独立した権利として「鉱業権」を設け、願い出に基づく国の設定行為によりこの権利を賦与することとしています。つまり、土地所有者といえども鉱業権によらないで法定鉱物を掘採し、取得することは禁止されています。

 なお、国内資源を適正に維持・管理し、適切な主体による合理的な資源開発を行うために、平成24年1月21日に改正鉱業法が施行されました。

改正のポイントは、

  1. 出願者に対する技術的能力等の要件を導入し、鉱業権の許可対象を資源政策の観点から適切な主体に限定することとしました。
  2. 石油、可燃性天然ガス、海底金属鉱物資源等の重要鉱物を特定鉱物として定め、特定鉱物については先願主義によらず、国が、資源の維持・管理を行い、最も適切な開発主体を審査・選定し、鉱業権を付与する制度を創設しました。
  3. 鉱物資源の開発に必要な地質構造等の調査のうち、鉱物の掘採を伴わないもので、一定の区域を占有して行う鉱物の探査に対する許可制度を創設しました。
法定鉱物と国民生活上重要な特定鉱物
  鉱物の名称
鉱業法の対象鉱物
(41鉱物)
金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、ビスマス鉱、すず鉱、アンチモン鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、クロム鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、砒鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱、希土類金属鉱、りん鉱、黒鉛、石炭、亜炭、石油、アスファルト、可燃性天然ガス、硫黄、石膏、重晶石、明ばん石、蛍石、石綿、石灰石、ドロマイト、けい石、長石、ろう石、滑石、耐火粘土(ゼーゲルコーン番号三十一以上の耐火度を有するものに限る。)及び砂鉱(砂金、砂鉄、砂すずその他沖積鉱床をなす金属鉱をいう。)
特定鉱物
(22鉱物)
  • 石油、可燃性天然ガス
  • 海底又はその下に存在する熱水鉱床をなす金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、ビスマス鉱、すず鉱、アンチモン鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、硫化鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ニッケル鉱、コバルト鉱、ウラン鉱、トリウム鉱及び重晶石
  • 海底又はその下に存在する堆積鉱床をなす銅鉱、鉛鉱、亜鉛鉱、鉄鉱、マンガン鉱、タングステン鉱、モリブデン鉱、ニッケル鉱及びコバルト鉱
  • 希土類金属鉱及びアスファルト

※「特定鉱物」について
石油、可燃性天然ガスなどの国民経済上特に重要な鉱物を「特定鉱物」として位置付けています。


(2)鉱業権とは

鉱業権の内容

 鉱業権は、「採掘権」と「試掘権」の二種類からなります。

「採掘権」は、登録を受けた一定の区域(鉱区)において登録を受けた鉱物を掘採し取得するための権利、「試掘権」は、鉱区において登録を受けた鉱物の賦存状況、品質、稼行の適否を試錐(ボーリング)等の方法で試し掘りをするための権利と整理されます。なお、試掘権の存続期間は2年(石油、可燃性天然ガスは4年。ただし、法改正前に登録を受けた「石油」は2年)となっています。つまり鉱業権は、未だ採掘されていない鉱物に対する所有権ではなく、採掘することによって所有権を取得することを内容とする支配権です。

 このほか鉱物の合理的開発を図るため、設定行為に基づき他人の採掘鉱区の一部で、登録の目的となった鉱物を掘採し取得するための権利として「租鉱権」も設けています。

鉱業権の性質

 鉱業権は、物権とみなされ、不動産に関する規定が準用されます。また、採掘権については、抵当権、租鉱権の目的となることができますが、質権等その他の権利の目的となることはできません。

 鉱業権は、設定、変更、存続期間の延長、移転、消滅、抵当権の設定及び処分の制限等全ての場合において、鉱業原簿に登録しなければその効力は生じません。

鉱業権者の責務

 鉱業権者には、権利の賦与と同時に、種々の責務が課されています。責務や手続きを怠ると、不利益処分を受けることがあります。

 例示すると、まず、鉱業の実施は、鉱業権者の権利であると同時に国家に対する義務であって権利を独占しこれを活用しない、つまり権利の上に眠ることは許されません。また、鉱業の実施に当たっては、合理的開発と危害防止のため事業実施計画とも言える「施業案」の遵守が求められます。さらには、鉱業によって与えた損害については、無過失賠償責任によって公正に賠償すべきこととされています。

鉱業権と土地所有権

 鉱業権が土地に関する権利とは別個の権利であるとは言え、土地所有権や土地使用権等の土地使用権原に優先するものではありません。正当な権利の行使である限り、土地所有者等は、鉱業権が設定された鉱区内であっても自由な土地利用が可能です。一方、鉱業権者は、鉱物の掘採や探査等のために地表を使用するには、当然、当該土地の使用に関する権利を取得しなければなりません。

 さらに、鉱業権は、公共用施設や建物の地表地下とも50m以内での掘採について制限を受けるなど、もともと公益を保護するとの観点から一定の制限を内在した権利であると言うことができます。

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本件に関するお問い合わせ先
九州経済産業局 資源エネルギー環境部 資源・燃料課
電話:092-482-5480 FAX:092-482-5394